概要
ページ数が多い小冊子で本文の文字が切れたりノドに隠れたりする主な原因は、紙の物理的な厚みがもたらす中綴じの「クリープ現象(競り出し)」や無線綴じの「ノド側の見え線」を見落としているためです
MINDS のプリプレス現場では、「MINDS製本3つのチェックポイント」で事前チェックを行っています。①中綴じの内頁におけるクリープ量の試算と補償値の確保、②紙厚計算式に基づく無線綴じの背幅の精密計算、③見開き画像・文字のノド逃げ(レイアウトの引き込み)設定
製本の物理的特性さえ理解すれば、レイアウト通りの美しい仕上がりを確実に再現できます
クリープ現象(競り出し)とは、中綴じ冊子で折った紙を重ね合わせる際、紙の厚みによって内側のページほど外側(小口側)へ押し出され、仕上げの三方断裁によって内側ページの小口マージンが削られてしまう物理現象のことです

完璧なはずのレイアウトで、なぜ文字が切れてしまうのか?
ディスプレイ上でレイアウトデータを確認しているときは、どのページも独立した平らな面に過ぎません
しかし、印刷所で折加工と製本工程に入った瞬間、紙の物理的な厚みが本来の幾何学的な寸法を狂わせ始めます
データ差し戻しや印刷トラブルで特に多いのが、中綴じの最も内側のページで文字が断裁されるケースや、無線綴じの見開き見出しがノドの奥に埋もれて読めなくなるケースです
これはレイアウトソフトのバグではなく、実際の製本における紙の押し出しや束厚によるロスです
プリプレス(版下作成)の段階で、MINDS Knowledge Academyコンサルティングチーム が実践している試算方法を取り入れれば、デザイン初期の段階で製本補償をレイアウト設定に組み込むことができます
考え方は実にシンプル
用紙の坪量(厚み)・ページ数・製本構造の相関関係さえ把握しておけば、製本におけるトラブルはすべて印刷前に回避できます
中綴じのクリープ(競り出し)量はどう計算する?
中綴じは、折った紙を外側から内側へと順に重ね合わせ、背の部分を針金で留めたあと、三方を断裁して冊子に仕上げる製本加工です
紙を重ねて折ると、外側の紙が内側の紙を包み込む形になり、中心に近くなるほどページが折り目から外側へ押し出されます
これが、いわゆるクリープ現象(競り出し)です
プリプレス補償を行わずに三方断裁を行うと、断裁機は表紙のサイズに合わせて一括で切り落とすため、最も内側のページほど小口側のマージンが大きく削られます
競り出し量の計算式は次の通りです:競り出しオフセット量 = ( 総ページ数 ÷ 4 - 1 ) × 用紙1枚の厚み(mm)
例えば、150g コート紙(1枚の厚み約:
・0.12mm)を使用した64ページの中綴じカタログの場合、最内ページの押し出し量は ( 64 ÷ 4 - 1 ) ×
・0.12 =
・1.8mm に達します
元々の小口安全マージンが3mmしか設定されていない場合、最も内側のページでは実質1.2mmしか残らず、文字が小口ギリギリに寄ったり一部が切れ落ちたりします
計算を誤ると、すべて台無しになります
實務での解決策は主に2つあります:
・データ作成時に、本文の小口安全マージンを標準の5mmから7mm以上に広げ、十分な余白を確保する
・InDesignなどのDTPソフトに搭載されている「クリープ(競り出し補正)」機能を活用し、内側ページの版面を自動的に内側へ微調整(シフティング)する

無線綴じの背幅とノド側の「隠れ」範囲の出し方
無線綴じは中綴じと異なり、折った本文の背側を切り揃えて糊(ホットメルト等)で固め、表紙でくるむ製本加工です
クリープ現象のような競り出しは起きない反面、「背幅の正確な計算」と「ノド側の隠れ(開き具合)」という別の課題が生じます
無線綴じの背幅の基本計算式は次の通りです:背幅 = ( 総ページ数 ÷ 2 ) × 本文用紙1枚の厚み + 表紙用紙の厚み
例えば、100g 上質紙(1枚の厚み約:
・0.1mm)を使用した160ページの書籍の場合、背幅は ( 160 ÷ 2 ) ×
・0.1 = 8mm となり、表紙データ作成時に背幅として正確に確保すべき寸法となります
また、無線綴じ冊子はページを開いた際、中綴じのように180度フラットに開くことができません
糊で固定されるため、ノド寄り約5mm〜8mmの領域は開いた際に見えにくくなります
見開きの画像やテキストを中央ギリギリまで配置してしまうと、中央付近の文字が綴じ目奥深くに落ち込んで読みづらくなります
無線綴じのデータを作成・確認する際は、以下のルールを守りましょう:
・見開きの文字や重要なモチーフは、ノド(綴じ代)の両側をそれぞれ5mm〜6mm内側に引き込み(ノド逃げを設定)、開いたときの視覚的連続性を保つ
・表紙データは「表1・背幅・表4」を1枚につないだ展開サイズで作成し、背の左右に各1mm〜2mmの筋押し(折り目)領域を考慮する
・MINDS のオンライン注文システムでプレビュー確認する際は、背表紙の文字が正確にセンター配置されているかをチェックする
製本方法の判断基準:ページ数で選ぶ中綴じと無線綴じ
製本方法を決める際、最も重要な決定要素となるのが「ページ数」と「紙の厚み」です
選擇を誤ると、どんなに素晴らしいデザインであっても実物としての完成度や使い勝手を損ねてしまいます
デザイナーや發注擔當者がそのまま使える判定基準は以下の通りです:
・8〜48ページ:中綴じが最適。ページがしっかり開き、コストを抑えられ短納期にも対応
・48〜64ページ:中綴じと無線綴じの境目。150g以上の厚手用紙を使う場合は、背の膨らみや割れを防ぐため無線綴じへの切り替えを推奨
・64ページ以上:無線綴じまたは糸綴じ製本を強く推奨。背が平らに揃い、頑丈な構造に
・128ページ以上のハードカバー(上製本):芯紙(ボール紙)の厚み(通常2mm〜3mm)を考慮する必要があり、背幅やイチョウ(溝)の寸法は印刷所が提供するテンプレートに従う

まとめ
・中綴じの最内ページは紙厚による競り出し(クリープ現象)が発生するため、三方断裁時の小口安全マージンは5mmから7mm以上に拡大する
・無線綴じの背幅計算式は「(総ページ数÷2)×本文の紙厚+表紙の紙厚」。表紙データは「表1+背+表4」の一体データとして作成する
・無線綴じは180度フラットに開かないため、見開きのビジュアルやテキストはノドから左右各5mm〜6mm離して配置する
・48〜64ページが製本加工の分岐点。150gを超える厚手用紙の場合は中綴じを避け無線綴じを採用する
補足と展望
製本は単なる印刷の後工程ではなく、プリプレス(データ作成)の段階から考慮すべき「物理的変数」です
デジタル印刷や自動断裁機の導入が進む中、データ作成の初期段階でスクリプト等を用いた自動処理やクリープ補正を行えば、修正差し戻しや再印刷のリスクを大幅に削減できます
デザイナーや発注担当者にとって、組版の初日から紙厚と製本構造を正確に計算しておくことこそが、デザインの美しさをそのまま実物へと昇華させる確実な方法です
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FAQ / よくある質問
- 中綴じのクリープ(競り出し)現象とは?
- 中綴じ冊子において、紙を重ねて折ることで最も内側のページが外側(小口側)へ押し出され、仕上げの三方断裁時に最内ページの小口マージンが最も大きく削られてしまう物理現象のことです
- 無線綴じ冊子で、見開きの文字がノド(中央)に埋もれるのはなぜ?
- 無線綴じは背を切り揃えて糊で固める製本構造上、ページを開いた際にノド側の約5mm〜8mmが接着面となりフラットに開かないためです。文字のノド逃げ(引き込み)を行わないと、綴じ目の奥に文字が隠れてしまいます
- ちょうど48ページの場合、中綴じと無線綴じのどちらを選ぶべき?
- 用紙の厚みによって異なります。100g以下の薄手用紙であれば中綴じで問題ありませんが、150g以上のコート紙やマットコート紙を使用する場合は、背の膨らみで冊子が閉じなくなるのを防ぐため、無線綴じを推奨します
- 無線綴じの表紙背幅を正確に計算するには?
- 背幅は「(総ページ数 ÷ 2) × 本文の紙厚(mm)+ 表紙の紙厚(mm)」の計算式で算出できます。表紙データ作成時には、中央にその幅の背表紙領域を確保し、折り位置(スジ押し線)を指定します
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